*統治権*
「……しまった」
「どうした、蓮二」
「試合の後貞治にペンを貸したんだが、返してもらうのを忘れていた」
「同じ階なんだ、部屋まで行けばいいだろう」
「しかし、……時間が微妙だ」
「……まだ十時過ぎだ。部屋には居るだろうが寝入る時間でもあるまい」
「……弦一郎、貞治と同室は誰か覚えているか?」
「海堂だったと思うが」
「だからつまり、そういうことだ」
「? わからん」
「察しが悪いな。……こういうことだ」
「っ」
「可愛い恋人と二人きりなんだ、浮かれているに違いないよ」
「なっ、合宿所で……不埒な!」
「……別に最後までしているとは限らないが…、邪魔をしたとあっては後で何を言われるか……。……明日の晩はこちらの邪魔をしにくるかもしれんな」
「……乾は邪魔か?」
「邪魔だよ」
「蓮二……」
「真田副部長〜柳さ〜ん! 起きてますか〜?」
「……一番の邪魔者を忘れていたな」
「そう言うな、弦一郎。おおかた一人で淋しくなったのだろう」
「……出るのか」
「一晩くらい我慢しろ。狭量だぞ、皇帝」
「ふん」
「……こら、不埒だぞ」
「事情が変わった」
「とんだ専制君主だな……」
---おまけ---
「ヘックシュ」
「風邪っすか?」
「いや、なんだろう……」
「伝染すつもりなら自分のベッドに戻ってください」
「……違うよ」
「だいたいなんで俺のベッドに……ックシュン」
「……風邪かい? 海堂」
「……アンタ、性格悪ぃ」
「風邪ならあたためてあげるよ」
「違うって、知ってんだろ」
「じゃあ何の問題もない」
「……結局こうなるんじゃないすか」
「仕方ないだろ? 恋人なんだから」
「……暑苦しくなったら蹴り落としますから」
「大丈夫、離さないよ」
end
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