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![]() 灼熱の砂漠を疾走するミクロの高速マシーン!それは昆虫です。その小さな体には、不思議な力が込められています。森を駆け抜けるアリの行列は、人間に例えれば何と時速60キロの猛スピードです。昆虫達には、花も全く違って見えています。花の真中が別の色に見え、蜜のありかがわかるのです。本物の枯葉と見分けがつかないカモフラージュ。一体どのようにして、こんなに巧みな技を見に付けたのでしょうか?昆虫達の不思議な営み、そこには私達とは全く違う方法で繁栄を築いた見事な戦略が隠されているのです |
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| ◆ プロローグ | |
| 昆虫と言うと皆さんは、どんな印象をもたれるでしょうか?昆虫の不思議な世界に大いに興味を持つ人、逆に気持ち悪くて見るのも嫌だと感じる人、様々だと思います!昆虫は姿形が異様なだけでなく、私達とはまったく別の生き方を選んだ生き物達です。昆虫がまるで宇宙人のように見えるのも、その為かも知れません。しかし、昆虫こそ、今最も繁栄している生物なのです。昆虫は、地球上の全ての動物の何と70%も占めています。地球は虫達の惑星とも言えるのです。昆虫は一体どのようにして、今の大繁栄を築いてきたのでしょうか?その秘密を探っていきたいと思います。 | |
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| ◆ 3億年前の昆虫達・昆虫の特徴 | |
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| ◆ 脊椎動物と昆虫、それぞれの進化の選択の違いとは? | |
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| 昆虫には私達のような背骨が有りません。外側に硬い殻を持つことで体を支えています。カブトムシの体を大きくしていくと、どうなるでしょうか?薄い殻では体を支えきれなくなり、潰れてしまいます。今度は潰れない為に体を厚くしてみると、どうなるでしょうか?殻の厚みで体内のスペースがほとんど無くなり、筋肉などの器官を納められなくなります。体の周りに殻を持つ構造では、大きくなるのは難しいのです。昆虫達は、逆に小さくなるのに適していました。その小さな体に適した目が複眼なのです。複眼は、たくさんの小さなレンズが寄り集まったものです。この6角形の一つ一つがレンズです。複眼を断面から見ると、薄く出来ています。しかも一つ一つが独立した小さな目です。この小さな目が2千個近く集まっても、僅か1ミリ四方の大きさにしかなりません。それではこの複眼で例えば花は、どのように見えるのでしょうか?私達の目ほど鮮明ではありませんが、ハッキリと花の輪郭がわかります。トンボの場合視野を広げる為にレンズの数は2万5千個にもなります。頭の大部分を目で覆うようなことも、薄くて軽い複眼だからこそ可能なのです。 | |
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| ◆ 植物と共に繁栄した昆虫達 | |
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| ◆ 昆虫は小さくてもスゴイのだ | |
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私たち脊椎動物は、背骨を持つことで体のサイズを大きくする事が出来ました。逆に体の外側に殻を持つ昆虫は、小さくなることに適していました。実はこのサイズの違いが、生き方にも重要な違いをもたらすことになりました。大きくなる道を選んだ私たち脊椎動物は、大きな脳を持つ事が出来ました。ここに大量の情報を集め、複雑な情報処理をするようになりました。これに対して昆虫達は、例えば神経細胞の数で見ると哺乳類に比べても100万分の1しかなく、私たちのような複雑な構造はできません。その代わりに、体の節目に小さな脳を持ち外からの情報に素早く反応できるようになっています。このように昆虫達は、小さく単純で、私達に比べてずいぶん見劣りするように思われます。しかし、この単純さが意外な能力を発揮するのです! |
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| ◆ コウモリと蛾の暗闇の情報戦略 | |
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カナダ、トロント大学のフラード博士は、蛾が音を聞く為にどんな仕組みを持っているのかを調べています。そして、コウモリの攻撃をかわす為に、蛾は特別な器官を作り出している事がわかりました。蛾の羽の下に見える小さな穴、この中に鼓膜があります。その鼓膜の奥には、コウモリの超音波を捉える細胞があります。しかし、その数はたった2つです。この簡単な仕組みだけで一体、蛾はコウモリの攻撃に対抗できるのでしょうか?実験の結果、蛾のたった2つの細胞は、コウモリが真近にきた時に発する超音波だけを捉え、その瞬間、蛾は素早く逃げようとしている事がわかりました。蛾は単純だからと言って、決して劣っているわけではないのです。その証拠に蛾は見事に繁栄しています。脳を使った複雑な情報処理をして攻撃をするコウモリに対して蛾は、たった2つの聴覚細胞だけで対抗しています。これはコウモリにとって、かなり屈辱的なことでしょう。しかし、蛾は本当に必要なごく一部の情報処理だけでコウモリから逃げる事が出来るのです。今度は実際に飛んでいる蛾に、コウモリと同じ超音波を当てて見ましょう。超音波を当てた瞬間、蛾は地面に向かって落ちていくように見えます。蛾の動きを細かく見ていくと、身を翻しその後急降下している事がわかります。蛾はきわどい所でコウモリの攻撃をかわしているのです。1メートルまで接近した時、蛾が突然コウモリのレーダーから姿を消すのです。闇の中でギリギリの情報戦略が繰り広げられているのです。 |
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| ◆ シロオビアゲハの七変化 | |
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つまり、幼虫は、保護色ではなくて表面の感触でサナギになる時の色を決めていたのです。昆虫にとって、木の全体の様子を細かく見分ける事は不可能です。ごく限られた情報で行動します。ツルツルなのは若くて緑の枝、ザラザラなのは古くて茶色の枝、シンプルですが、そこには生き残る為に大切な知恵が込められているのです。昆虫達の中には、葉の細かい模様まで真似ているものもいます。一体、このような見事なカモフラージュは、どうして出来るのでしょうか?本当に不思議ですが、これもシンプルな情報をもとに決められているのかも知れません! |
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| ◆ 昆虫たちのシンプルな情報戦略 | |
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昆虫達は、大きな脳も無くシンプルな情報を頼りに生きています。しかし、コウモリと蛾の戦いに見るように、複雑な情報処理をするコウモリに対して、蛾は簡単なセンサーだけで立派に対抗しているのです。昆虫達の情報戦略は確かに単純ですが、そこには全く無駄がありません。生きていく為に最も必要な情報を的確に選び出しているのです。 |
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| ◆ 外敵から群れを守るニホンミツバチの見事な連携プレー | |
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| 一体ミツバチ達は、どのようにして群れの秩序を維持しているのでしょうか?一見のどかに見えるニホンミツバチの巣の周りにも、時として緊迫した戦場に変わります。スズメバチがやってきました。スズメバチは、巣を出入りするニホンミツバチを狙っているのです。スズメバチの羽音を聞くと、巣の入口で見張っているハチたちは、一斉に体を震わせて相手を威嚇するように音を出します。するとスズメバチは羽音を消す為に地上に降り立ち、巣の入口に忍び寄っていきます。自分の何倍もあるスズメバチに果敢に立ち向かうニホンミツバチ。ハチ達は次々と折り重なり、スズメバチを包み込んでいきます。温度が変わる特殊なカメラで見ると、ハチの塊は熱くなっている事がわかります。羽の筋肉を震わせて熱を出しているのです。スズメバチは、温度が45度になると死んでしまいます。ハチ達は温度を上げていきます。しかし、45度以上、温度を上げる事はありません。あと3度上がると自分達も死んでしまうからです。微妙に温度調節しながら、スズメバチを熱で殺そうとしているのです。自分よりも数倍も大きい敵を倒す集団の見事な連携プレーです。巣の中で群れ全体が、波打ちながら音を発しています。1匹1匹はただ羽を1回震わせているだけののに、全体が歩調を合わせたかのように大きな威嚇音を作り出しています。 | |
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| ◆ ニホンミツバチの見事な集団行動、そこにはコミニケーションがあった | |
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| 一体、ニホンミツバチはこの音で、どのような情報のやり取りを行っているのでしょうか?現場で収録したダンスの音を持ち帰り、細かく分析してみました。ダンスを踊る時ハチは、ほぼ決まった長さの音を出しています。この音の長さが、巣からエサ場までの距離をあらわす事がわかってきました。さらにダンスをよく見ると、音を出している時のハチの向きがいつも同じである事がわかります。実は、ハチの向いている方向と、その時の太陽の位置によって、エサ場の方角を知らせているのです。ミツバチの巣は、地面に対して垂直に立っています。ハチは壁に張り付くようにしてダンスを踊ります。まず、音を出している時のハチの向きと垂直の軸との角度を仲間に知らせます。そして、垂直の軸をその時の太陽の位置に合わせる事でエサ場の方角がわかるようになっています。朝早く、花が一斉に開き始める時刻になると、木の中が賑やかになります。暗い巣の中でハチたちのダンスが始まっているのです。エサ場から帰ってきたハチがダンスを踊る度に、さらに多くのハチ達が巣を飛び出してゆきます。こうしてエサ場へ向うハチの数は倍倍ゲームで増えていきます。群れを率いるリーダーはいません。ミツバチたちの見事な集団行動、それは1匹1匹が行う単純な音の情報のやり取りから生まれていたのです。そして昆虫達は、さらにシンプルな情報戦略を選んでいきます! | |
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| ◆ 昆虫の中で最もシンプルな生き方を選んだアリたち | |
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| ◆ ハキリアリのシンプルなルール、農耕生活 | |
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| ハキリアリは、500万匹もの大集団で生活しています。行列を追って巣の中に入ってみました。するとそこには、さらに不思議な光景が広がっていたのです。巣の中で待ち受けた小さなアリが、葉を受け取りそれを小さく切り刻み、当たり一面に貼り付けていきます。その葉の上には、白い綿のようなものが広がっていました。実はこれ、キノコなのです!ハキリアリは、葉の上に菌を植え付けてキノコを栽培し、それを収穫しているのです。これはまさに農業です。ハキリアリは、人類よりも遥か昔から農耕生活を始めていたのです。 | |
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| ◆ ゴミ捨て場まで作っていたハキリアリ | |
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ハキリアリ達が築き上げたシステムは、私達の想像をはるかに超えています。森の朝、アリたちが次々の木を伝って行きます。実はこれはキノコを栽培した後の葉の屑を運んでいるのです。そして、決まった場所にアリたちは、葉の屑を捨てていきます。山のように積み上げられたゴミ、アリたちは専用のゴミ捨て場まで作っていたのです。大量の葉の屑は、やがて森の大地へと還っていきます。そして、再び木を育てる肥料となるのです。羽も無く目も退化させ最もシンプルな道を進んだアリたち、しかしそのアリたちは、人類とは全く違う文明社会を作り上げていました。そこにもシンプルな原理が隠されているに違いない。ドネブール博士はそう考えています。 |
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| ◆ シンプル・イズ・ザベスト | |
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| ◆ 編集後記 | |
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この「昆虫達の情報戦略」をまとめる前に、「本の扉」スペンサー・ジョンソンの「チーズはどこへ消えた?」の編集作業を行っていました。この本の内容が、まさにこの「昆虫達の情報戦略」そのものだと思いビックリしている次第です。本の主旨は昆虫ではなく2匹のネズミと2人の小人がモデルなのですが、まさに、シンプル・イズ・ザベストを象徴する生き方論なのです!高度な頭脳を持ち物事を複雑に捉える思考方法をする小人は、事態を分析することに精を出し行動力に欠けます。一方、単純にしか物事を考えられないネズミは、その分優れた本能を持ち感覚を研ぎ澄まし、僅かな環境の変化にも敏感に反応し素早く行動するのです。本書では、状況の急激な変化にいかに対応すべきか?を説いています。つまり、問題を複雑にし過ぎずに、物事を簡潔に捉え柔軟な態度で素早く行動することの重要性について述べているのですが、まさにこの昆虫達の生き方そのものです。21世紀型の生き方は、まさに昆虫から学ぶ点が多そうですね! |
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| 人間と昆虫の進化の違い | |||||
| 種 | 構造 | 形態の違い | 進化の 方向性 |
特徴 | 生き方 |
| 人間 | 複雑 | 脊椎動物 背骨を持つ(大きな体を 支える事が可能) |
巨大化 | 大きな脳を持つ 複雑な情報処理 |
複雑な情報を管理する 中央制御型のシステム |
| 昆虫 | 単純 | 節足動物 6本の足を持つ・複眼 体の外側に硬い殻を持つ (小型化に適した構造) |
小型化 | 体の節目に小さな脳を持つ 外からの情報に素早く反応 |
シンプルな原理やルールで 秩序を維持。僅かな環境の 違いに適応し大繁栄。地球 上の動物の70%を占める。 |
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| 昆虫達のコミニケーション | ||
| @ | コウモリと蛾 | 超音波と脳を使った情報処理を行い攻撃するコウモリに対して蛾は、たった2つの聴覚細胞だけで応戦している。 |
| A | シロオビアゲハ | シロオビアゲハのサナギの天敵から身を守るカモフラージュは、木の枝の表面の感触によって、保護色に変化する。 |
| B | ニホンミツバチ | 外敵のスズメバチから身を守る為に、仲間同士の見事な連携プレイを行う。 |
| C | ニホンミツバチ | ハチ達は、花粉や密のありかを「ダンス」によって仲間に伝達。 |
| D | アリ | たった2つの行動パターンで見事な秩序を作り上げている。 |
| E | ハキリアリ | 大集団の共同作業、連携プレーで農耕生活を行う。ゴミ捨て場まで作り、生態系の保持に努める。 |