*船上のボーイズ・ライフ*
2.
「大層な部屋だな」
荷物を肩に掛けたまま部屋を見渡した乾先輩がつぶやく。
先輩の言葉通り、俺たちに宛てがわれた客室は普通の中学生が二人で使うにはおよそ相応しくない豪華さだった。
結局部屋割りは不二先輩の提案通りあみだくじで決めた。
自分の名前を辿った先にあったルームナンバーを思わずつぶやくと、低い声がそれに重なった。
目を見合わせた乾先輩は、約11%だよ、と言っていた。
「海堂はどっちのベッドが良い?」
「俺はどっちでも良いッス」
「ひとつを二人で使えなくもなさそうだけど、」
「遠慮します」
睨みをきかせた丁重な辞退に、先輩は肩をすくめる素振りをわざとらしく見せてからドア側のベッドに自分の荷物を置いた。
確かにシングルベッドにしては余裕のある大きさだったけれど、わざわざツインの部屋で180cmを優に超える乾先輩と寝るのは遠慮したい。
一番の理由は別な所にあるのだけれど。
「まあ、今回は同じ部屋ってところで手を打っておくよ」
「……細工したりしてねぇだろうな、」
あまりに都合の良すぎる結果を訝しんだ俺を見て、先輩は笑った。
「嬉しくない?」
「別に……」
嬉しくないわけではない。
正直、11%の確率は俺たちに味方してくれたと思った。
ただ、桃城たちほどあからさまでなくても浮かれた気分にしてしまうこのロケーションで、二人きりになってしまうのが少し怖いだけだ。
二人きりでいられるのは嬉しいけれど、なにかいつもと違うものが俺たちを押し流していくんじゃないかと、そう思う。
「……そろそろ行った方が良いんじゃないスか」
「そうだな。じゃあ行こうか」
苦し紛れに提案すると、今追い詰める気はないらしく、先輩はあっさりと折れた。
思わず洩れた安堵のため息がかすかに響いた。
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確率が間違っていたらごめんなさい。
9人を2・2・2・3に分けるとき、乾と海堂が二人部屋になる確率で計算しました。
多分9分の1(=11.111…%)で合っていると思うんですけども…。
組み合わせ計算なんてもう忘れたよ…。
間違っていたら教えて下さいませ。