*船上のボーイズ・ライフ*














 7.




 菊丸先輩たちが出ていった後、元の私服に着替え直した俺たちはテニスコートを見に行くことにした。
 俺も気になっていたし、乾先輩は試合を行なうコートのデータが欲しいらしい。
 このままこの部屋に二人きりで閉じこもっていたくなかったというのもある。
 外に出れば俺たちの間の風通しもきっとよくなるに違いない。
 一緒に見に行かないかと誘われて二つ返事でついて行くと、そこには期待以上のコートが広がっていた。

「すげえ……」

「これはなかなか……、大したものだな」

 船の中とは思えない広くて立派なテニスコートに二人で息を呑む。

「こんな所で試合できるんスね」

 見渡すかぎりのグリーンにどうしても弾んでしまう声に、先輩も嬉しさを滲ませた相槌をうってくれる。

「ラケットも一緒に持ってくれば良かったな」

「ッスね」

 下見だけのつもりで、荷物は部屋に置いて手ぶらで来てしまったのが悔やまれる。
 こんなのを見せられたら、いてもたってもいられない。
 やっぱり俺たちはテニスバカだと思った。
 部屋にラケットを取りに戻ろうかと思いかけたところで、先輩が辺りを見渡してつぶやく。

「でもこの設備なら貸しラケットくらいありそうだな」

 確かにバカンスを楽しむためにあるようなこの船ならば、乗客のためにあらゆるものを準備していそうだ。
 広い敷地に目を走らせていた先輩が表情を変えたのが判った。

「ビンゴだ、海堂」












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豪華客船の設備なんて分かんないよ……。(庶民)